四十肩・五十肩は、関節を覆っている関節包(かんせつほう)の拘縮に一番の原因があると考えています。
関節包とは文字通り、関節を包んでいる袋のことですが、
関節の中には、動きがスムーズになるように、滑液(かつえき)と呼ばれる液体が入っています。
また、関節には適切な「遊び」というものがあります。
関節は長期間動かしていないと動きが悪くなりますが、痛みが生じる際には、
筋肉そのものが硬くなってっいたり、筋力の低下を起こすこともありますが、
肩の内部で細かい傷がつき炎症をおこし、これらが修復する際に繊維が短くなり、
関節包が縮み硬くなることが、四十肩・五十肩の要因と考えます。
そうなると、関節の動きを滑らかにする役目である、滑液(かつえき)がうまく循環されなくなり、
同時に関節の遊びの減少がおき、動かす際に内部での摩擦が大きくなります。
こうなると痛いから動かさない、動かさないからよくならない。
というように負の循環が続いてしまいます。
当院では、関節包内運動というのを重視しています。
これは、従来のストレッチや、痛くても我慢して動かさなければいけないという考え方とは少し異なります。
関節を正常な状態に回復させるためには、関節内部での動きの制限を取り除く必要があります。これは本来、健康な関節がもっているべき関節の遊びというのを取り戻すことです。
肩の関節は球関節という形状ですが、その関節の動きを理解するには、凸の法則、凹の法則、関節内のすべりを理解しておく必要があります。
また、インナーマッスルといわれる肩回りの4つの筋、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋のエクササイズを行う必要もあります。
エクササイズはチューブ、ダンベル、水中などで行うことができます。
外旋は棘下筋、内旋は肩甲下筋、外転は棘上筋のエクササイズになります。
小円筋は棘下筋と筋肉の走行がほぼ同じなのでセットで考えます。
エクササイズにはこつがあります。
まず、これらのインナーマッスルの筋力は小さいので、負荷は少なくして行います。
また、アウターマッスルである三角筋をなるべく使わないようにして、より深いところにあるインナーマッスルを動かすことが重要になります。
これらのエクササイズは、通常の筋力トレーニングとは異なり、筋肥大や最大筋力を高めるために行うものではないということを認識する必要があります。
リハビリでは再教育という言葉を使っていますが、
一般的ではないので、「うまく使えるようにすること」と考えればいいでしょう。
できるだけ毎日行ってください
ラジオ体操やストレッチと同じ位置付けで考えるといいと思います。
完治するのには1年以上かかる場合もあり、多くの人にとって継続するのは困難です。
途中で、いやけがさしてしまうでしょう。
でも、ここであきらめずに、コツコツと行う必要があります。
トレーニングが好きな人でもリハビリは苦しいです。
成果が現れるのは3か月後と考えてください。
1、2週間でやめてしまえば、その後は肩の可動域がせまいまま日常生活を送ることになり、
場合によっては手術が必要になります。
リハビリを始めるのが早いと考えられるのは、
1夜間痛があるとき
2動かさなくても常に痛みがあるとき
3動かし始めから痛みがあるとき
この場合は内部に炎症があると考えられます。
この段階の時はストレッチ、マッサージなどで悪化する可能性があります。
動かせるけど可動域がせまい、動かすと後半に痛みがある。
この場合は、問題ないと思います。
ストレッチの強さですが、結論からいうと少し痛いぐらいでないと効果はでないでしょう。
しかし、「かなり痛い」「だいぶ痛い」「とても痛い」と言われても本当の痛さは本人にしかわかりません。
まずは、「物足りない」ところからスタートして、翌日のからだの状態を確認します。
痛みが増してなければ問題ないと判断します。
そして、欲張らずにだんだんと強くしていきます。痛みが増せば負荷が強すぎた、悪化していなければ問題ないと考えられます。
注意点としては、朝起きて、すぐにストレッチをするのはやめることです。
からだがまだ温まっていないときには、悪化している関節にはリスクがあるからです。
5~10分歩いたり、体操をした後なら問題ないと思います。
あせらないことが大切です。
そしてからだが改善する時、
一直線には向上しません。
また、停滞期もあると初めから思ってください。
重要なことは、そこでやめないことです。
停滞期とは逆に急に以前より腕が上がることもあります。筋肉や関節の内部での軟部組織の拘縮や癒着がとれて、
さらに関節内部で滑液がうまくでていることが要因と考えます。
改善されてくると、痛みが減少し、日常生活でも動かせるようになる。
そうなれば、改善が加速します。
ぜひ、よくなっと時の嬉しさを実感して欲しいです。
尚、ストレッチとは毎日やるものです。
家族の方がリハビリ中であれば、ぜひ励ましてください。
以上、いきなり専門用語が多くなってしまいましたが、いずれにせよ、放置していてもよくならないことは目に見えています。
ぜひ、粘り強く続けてください。
参考までに
球関節という関節は、哺乳類が進化の過程の
後半に手にいれた関節です。
これにより高い運動能力を獲得することができ、
哺乳類が地球上で頂点に君臨する生き物になりました。
しかし、二足歩行を選んだ人類は、肩の可動範囲をより大きくしました。
その結果、とても器用に複雑な動きができるようになりましたが、
高性能な肩はほったらかしにしておくと故障が多くなる関節になってしまったわけです。
ですから、
「日ごろからケアをしていかなければならない部位になってしまった」
とも言えます。